←戻る     次へ→
17日目:2000年2月25日(金) くもりのち雪
主な移動経路:デンバー方面〜ラピッドシティへ
宿泊地:ラピッドシティのYH


#大統領に会うために

シャイアンを出たのが夜中の2:30。1時間遅れらしい。

ここで別れられるかと思ったのにガキもまた一緒の方向で落胆は隠せない。彼らはどこに向うつもりなのだろう。次に乗りかえたバスは、COACH USAの何と、”YELLOW STONE”行きのバスだった。すごい!

このバスに乗っていたらイエローストーンに行けるということだ。

それにしても強風で天候が穏やかでない。いよいよ北部にやってきたのだ、と実感(なんとなくそういうイメージを抱いていた)。バスにはテレビまで装備されており、映画を上映。今回のドライバーは女性でなかなかユーモアのある人だ。隣のおじいちゃんと話をしようと思ったけど、耳がかなり遠かったのであまり会話ができない。

それにしてもバスには様々な人が乗り込んでくる。トロトロして一番最後に乗ってきたくせに、「子供と父親を一緒に座らせてやってよ」という図々しい親子。主張だけはしっかりするんだよね。前後でもいいじゃん・・・とにかく早くこのバスから降りてしまいたい。

次の乗り換えはGILLITTE(綴りがあっているかどうかは不明)。小さなディーポだ。雪がかなり積もっている。トイレに行きたくて、まだバスは発車しそうになかったのでとりあえず用を済ませることに。

ところが!

トイレから出ると、みんな自分の荷物持ってトイレの順番待ちをしてるではないか!え?!外に行ってみるとちょうどイエローストーン行きのわたしが乗って来たバスが行ってしまったところだった。あっれぇ、荷物・・・わたしの荷物ってもしかしてイエローストーンまで行っちゃったのだろうか。自分で積み替えしないといけなかったのか。(通常、荷物に行き先のタグを付けてくれていて、乗り換えのときにはバスの人が積み替えてくれるのである。なのに周りの乗り換え組みがみんな自分で大荷物を持っているので不安になったわたし。)

ドキドキしつつ、でも、今更騒いだところで仕方がないので(意外に冷静)ラピッドシティまで行ってなかったら探そうと思って"SKI BUS"と書いてあるラピッドシティに行きのバスに乗りこんだ。ガキはさらに北へ行くらしくやっと別れられた。ほっ。このバスの乗客はわずか5人しかいなかった。なんて快適なのだろう。

朝の11:00、ついにラピッドシティ到着。12時間はなかなかに長い。これでグレイハウンド3連車中泊終了である。やれやれ!荷物のことが気がかりだったけれどが、ちゃんとトランクから登場。ちゃんと積み替えてくれていたんだ。心底、ほっとした。慌てず、さわがず。

さて宿探し・・・しかしディーポのインフォメーションも開いていなければ、人もいない。パンフレットらしきものも置いていない。ワダさん(インターネットで情報を提供してくれた方)によると、ここにYHの情報あると言っていたけれど・・・・赤い紙が目に入ったのでもしやと近づいてみるとYHのパンフレットだった。地図で見る限り近そうだ。

バス会社の人が通りかかったので聞きこみ調査。

「わたしあの、4人の大統領に会いたくてきたんですけど、ツアーってあるんですか?今。」
「え?ツアーだって?今ひとつもないよ。」

(凹)。

そりゃ、今は雪が降ってないとはいえ、こんな冬にあるわけないよね・・・

一瞬このまま20分後に発車するシカゴ方面行きのバスに乗ろうかどうしようか迷ったけれど、とりあえずYHへ行くことにした。もし、誰か車で来てる人が泊まっていたらお願いして連れていってもらおうと思ったのだ。図々しいと思われてもなんでもだ。それにせっかく、2回も乗り換えて遥々来たことだし。このま通り過ぎるのももったいない。

テクテク歩いていくと、YHは普通の民家といった感じでわたしは2人のおじさんに迎えられた。オーナーであるロバートは少し日本語が話せるようだ。1泊16ドル。宿泊者名簿に名前を書いたけどどうやら本日の利用客はわたしだけのようである。

「そうだね、今日は今のところキミ1人だね。」

YHに泊まっている割に、今回どうも1人ということが多い。気楽でいいといえばいいのだけど。

ロバートは台帳にサインをしてくれ、と言った。

筆記体のローマ字で宿泊者名簿にサインをした。クレジットカードで支払った。クレジットカードのサインは漢字で登録してるので、レシートには漢字でサインをした。すると待ってました、というように、ロバートは質問をしてきたのである。

「いつもそうなんだ、ジャパニーズは。どうして、台帳のサインはアルファベットで、クレジットカードのサインは感じ漢字なんだ。この違いは何だ。サインって普通1つなのに、どうして日本人は2つもサインがあるんだ。誰にきいても明確な答えが返ってこない。説明してくれないか。」

困った・・・。

なんだろう、この違い。

「サインは漢字で書くけど・・・漢字で書いたらあなたたちには読めないでしょ?」というと"I know."とロバートは言った。何と説明すればいいのだろう。ただ、「他の国に行って、サインしてって言われたとき、漢字で書いてもローマ字で書いてもどっちも受け入れられるから。チャイニーズキャラクター(漢字)でサインしてください、って言えば絶対漢字でみんな書くんだけど・・・」というと、そうかそうか、と理解してくれた。「やっとわかったよ」・・・ねぇ、ロバート、本当にわかった?(笑)

でもそのときは思いつかなかったけれど、日本ってサインよりも基本的にハンコだからかな。サインと言われても、ピンとこないのは。

とにかく誰かに連れて行ってもらおう、ザ・他力本願作戦は宿泊者がゼロという段階で消えてしまった。ロバートに相談してみた。「何?大統領に会いたいだって。」

ここでプッシュしなければ!と思い、いつになく粘ってみた。

「そうなんです!ここの街のことで知ってるのは、大統領のことだけなんです。どうしても行きたくて。そのためだけにここに来たんです。なんとか方法はないですか。」

その大統領があるところはマウント・ラッシュモア(Mount Rushmore)といい、ここから40kmくらい離れているらしかった。「夏だとツアーもバスもいっぱいあるよ。でも冬はナッシングだ。誰もこんな冬なんかに来ないからね。」と言って笑った。だめだろうか、って思ったときロバートはこう言った。

「ただ、僕の友達がツアーをやってる。でもそれは夏だけ。大学の先生をしていて、休みのときだけやってるんだよ。いろいろまわってくれて40ドルくらいかな。でも、彼はマウント・ラッシュモアの近くに住んでいてカオリをピックアップするのにここへ来て、案内して、またここまで送ってきて彼はまた戻る。2往復だ。しかもカオリ1人のために。彼にとったら稼ぎにはならないだろうけど、もし、時間があったら連れていってくれると思うよ。タクシーで行くにしても遠過ぎるし。なんとも言えないけど、 彼が一番いい方法だと思う。午後にでも電話をしてみてあげるよ。」

ロバートはそう言ってくれた。果たしてうまくいくだろうか。とりあえず疲れたので、少し、この街に関する現地の資料を読んでからお昼寝をすることにした。

今晩も一人確定?
ユースホステルの女子部屋


起きたら夕方の4時。外を見てびっくり仰天。雪が降っていたのだ。しかも一面真っ白な世界。愛媛で育ったわたしには雪はとても特別だ。

しかし雪といえば聞こえはいいけど、風も強く、いわゆる”嵐”というやつだ。それにしてもロバートは彼に電話をしてくれたのだろうか。

夜、7時くらいにロバートのところへ行った。奥さんと団らんしているところであったが、快く中へ入れてくれた。テレビの下の方に出てくるニュース速報では、嵐の情報が流れていた。

「ハイウェイは通行禁止になってるよ。そりゃこの雪だもんな。え?歩いてラッシュモアマウンテンまで行ったらどうだって?!カオリ、それは不可能だよ。この雪、寒さ、そして距離。どれをとっても無理だよ。そうそう、彼に電話をしたら、明日土曜日は授業らしいよ。でも、14時には終わるから、それから来てくれるらしい。ただ、この雪だ。ひどかったら3日続くよ。たぶん今日のは明後日には完全に晴れるだろうけど。明日、朝から晴れて、ハイウェイの雪が解ければ昼からラッシュモアマウンテン だ。明日晴れるといいね。」

もう、とにかく明日行けれなかったら無理。これ以上滞在は不可能。1回行ったニューヨークをあきらめればいいことなのだけど。でも今回は美術館に行きたいし・・・

「それでもどうしても行きたかったら、ヒッチハイクしたらいいよ。」ロバートと奥さんはそうサラリと言ってのけた。あれ、ヒッチハイクってアメリカでは違法のような気がするのはわたしだけ?でも、ヒッチハイク、おもしろいかも(結構その気)。

ロバートが作っているというラズベリー・ビールをごちそうになったけどお世辞じゃなくってほんとにおいしかった。ロバート、ごちそうさま。

歩いて10分くらいのお店で、今日、ギター弾きさんのライブがあるというので出かけることにした。外は大嵐。こんな本格的な雪を体験するのは初めてかもしれない。真新しい雪に足跡をつけながら、近くのコーヒーショップまででかけた。めったに飲まないホットチョコレートを注文し、耳を傾けた。

明日は晴れるだろうか。


18日目:2000年2月26日(土) 快晴
主な移動経路:ラピッドシティ滞在
宿泊地:ラピッドシティYH

「外、晴れてる?!」

カーテンを開けると外は快晴。よっしゃー(・∀・)。
しかし、風はビュービュー吹き付けている、雪はあまり解けてないようだ。どうなるのだろう。
とりあえず、2時まで時間があるのでごはんを食べることにした。食べてからもヒマだったので少し外でも歩こうと思ったときロバートの声がした。

「カオリー!言ってた男の人が来てくれたよ。」

ああ・・彼の名前忘れちゃったよ。(すみません。多分ジョンだったと思うんだけど・・)ま、とにかく学校が早く終わったらしく、12時に来てくれた。わーい!あのまま出かけてたら・・・(危)。
わたし1人のために、大きな車で来てくれた。ついに大統領にご対面できると思ったらなんだか興奮してきた。

車の中で彼といろいろ話した。彼はドイツ出身らしく、もう13年アメリカに住んでるということだった。奥さんはアメリカ人。彼は近くの大学で先生をしていて、そこには日本人の大学生がたくさん来てるということであった。

ハイウェイの雪は殆ど解けていて、ジョンのでっかい車はブイブイと軽快に走っていった。

「あのカーブを曲がれば大統領が見えてくるよ。」
「え?そんな道端から見えるの」
「そうそう。見えたら少し止まろうか。」

そのカーブを曲がった。「あ、あった!見えたよ!」


きたか?!

確かにこの目で捉えることができた。
車を降りて、少しだけ近づいてみる。間違いない。

4人の大統領がもうそこにいる。やったぞー!!

ついにここまで来たんだね。嬉しくて仕方がない。nyaonyaoさんとワダさん以外、冬に行けるわけがないからと誰もが止めたサウスダコタ。


    
アップ!
!!

左から、ジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソン、セオドア・ルーズベルト、アブラハム・リンカーン。

もっと近くに行こうとジョンが言ってくれ、「ここが一番近く見えるとこだよ。」というところへと案内してくれた。やっぱり顔がでかい!早朝に来るのが一番いいらしい。朝以外では、どうしてもルーズベルトの顔が陰になってしまうからとのこと。でも、そんなことはどうでもいい。とにかく来れたのだから。ももちんやったよ(笑)。←わたしの友、ももちんは数年前、この大統領に会うためだけにサウスダコタを目指したのだが悪天候のため飛行機が飛ばなかったのである。
後からの話ではあるが、ここでジョンが撮ってくれた大統領+わたしの写真は何枚も撮ってくれたはずなのに、1枚もうまく撮れていなかった(涙)。

ガンシロです
ここの資料館にて

何故この像を造ることになったのか、何故この4人が選ばれたのか、作業の工程などをフィルムで紹介もしていた。おばかなわたしは、てっきりインディアンの仕業かなにかだと勝手に思い込んでいたわけだけれど、ただの観光客よせ目的に過ぎないらしい。しかし、かなりの田舎だというのに、想像以上に観光地化している。毎年何百万人と来るらしい。そんなサウスダコタ州のラピッドシティ。もしかしてわたしってかなりな無知なのか。

とにかくもう、4人に会えたことに大満足だった。ここからももちんに自慢のハガキを是非出したかったけれど、どこもかしこも店が閉まっていた。

車に戻り、ジョンは有名な洞窟だかトンネルだかにつれていってくれようとしたけれど、雪で道がCLOSEDしていて行くことはできなかったけれど、”クレイジーホース”にも連れていってくれた。 (ちょっとわかりにくいけれど、看板の向こう側の岩が暴れ馬に乗っているように見えるのです)


見えるかなぁ
クレイジーホース

ドライブをしたあと、ジョンは彼の家へと案内してくれた。奥さんは気さくですごく優しい人だった。お家はいかにもアメリカ!という表現の難しい、でもかわいらしい家・・・なんとうらやましい!スーパーにもつれていってくれたので、食材を買い込んで夕方YHへ戻った。ジョン、本当にどうもありがとう。

何の毛かしら
裏庭にあった何やらの毛!!

夜ごはんはスーパーで買ったセロリとウィンナー炒め。またこれが自分でいうのもあれだけど、かなりな美味。セロリ最高!

あっきーにシカゴに着くのは1日遅れると電話をしてから、映画を観に夜の町へと出かけていった。2ドル映画館。"Into his arms"というサスペンス。単純なストーリーだけど、2ドルなら許せる気がした。それにしても夜歩いていても全く緊張感のない町である。この安心感、まるで日本にでもいるみたいだ。

寝床に帰ると、人が居てびっくり!(驚)

ついにわたし以外の宿泊客の登場である。彼女はアメリカ人のベス(♀)。アメリカ中の国立公園巡りをしているらしく、今日はサウスダコタのバッドランドへ行っていたらしい。いろんなところのハガキや本を持っていてあれやこれやと見せてくれた。

彼女は西海岸にある、”タホ湖”というところが一番すきだといった。1年間有効の国立公園のパスをゲットしていて、ハンコを押してもらうやつ(スタンプラリーのようなもの)も持っていた。たくさんの国立公園のハンコを押してもらっていた。かっこいいな。わたしもレンタカーを借りて周りたい。あそこがいい、ここがいいという話で盛り上がった。

「なんでこんな冬に国立公園巡りをしてるかって。確かに冬は雪で、昨日みたいに入れないこともあるけど、人も少なくって静かだから野生の動物にたくさん出会えるの。冬の国立公園がわたしは好きよ。」

わたしも、こういう話が大好きだ。


19日目:2000年2月27日(日) 快晴
主な移動経路:ラピッドシティ〜シカゴ方面へ
宿泊地:グレイハウンド(車中泊)

朝、目覚めるとベスはもう旅立っていた。

朝ごはんを食べた後、早々にわたしも出ることにした。ロバートに挨拶してから行こうと思ったけど、部屋が暗くてまだ寝てそうだったので、そっと出ていこうとしたらタイミングよく部屋から出てきてくれた。ありがとうをちゃんと言えてよかった。

ディーポまで歩いていくと入り口のドアが閉まってたので、近くの芝生のところでごろごろ。ああ、めっちゃ気持ちいいな。真っ青な空を見上げてると、まるでこの国にずっと居れるんじゃないかと、そんな錯覚にとらわれる。

やっぱりこの街からハガキをだしたいと思い、ハガキ探しをすることにした。でも、バックパックが重い・・・思案した結果、その辺にほったらかして行くことにした(え?)。この街には誰も盗る人はいないだろう、そんな勝手な確信がどこかにあったのである(結局重いのを持つのがイヤだっただけの話)。

あちこち探し回ったけれど、ハガキはどこにもなかった。

こんなバスに乗っていたのです
わたしをどこにでも連れて行ってくれるバス

11:30のバスに搭乗した。行き先はSIOUX FALLS。

シカゴに行くのに、何回か乗り換えがあるのだろう。乗客は7人程。いつもの通りにそのまま乗り込んだら、車掌さんがアメリパスを持ってどこかへ消えてしまった。どうやらカウンターでチケットを発券してもらわないといけなかったらしい。


雪化粧

この地域は本当に何にも無い。山はうっすら雪が積もってなんとも幻想的。夕日がバスの大きな窓から見える。日本でも見えるはずなのに。何も変わらないはずなのに。

日本にいても、素直に見たものの美しさに感動できているだろうか。日本を離れたからと、いともたやすく夕日に感動してしまうわたしはとても自分勝手だ。


また、明日。

最後までどう読むのかわからなかった”SIOUX FALLS”へは夜の9時に到着。ここがどうやらサウスダコタ州でいちばん大きな街らしい。でも、そんな感じは全くしない、こじんまりしたあったかい感じのするディーポである。

そこのカウンターへ行くと、手書きでチケットを書いてくれ、アメリパスのケースをおばあちゃんがくれた。こんなものがあったのか。サウスダコタまで来てやっともらえたケース。なんだかすごくうれしかった。すっかりヨレヨレになった大事な大事なパスを入れる。ここからネブラスカ州のオマハ行きのバスに乗る。

シカゴまでの道のりはかなり遠いらしい。


レアな手書きのチケット

シートを倒すとオリオン座が窓いっぱいに見えた。

そういわれてみれば、ダイキくんは「どこに行ってもね、月を見ると、日本で見る月と同じなんだな、って安心する。」と言っていたっけ。確かわたしはそのとき、「わたしは海をみたら安心するよ。」と応えた気がする。でももう一つあった。このオリオン座。他の星はわからない。でもパッと見上げるとオリオン座だけはすぐにわかる。どの季節に、どこの空に見えるかも知らない。でも、いつも見上げたらわたしが見つけやすいかのようにそこにある星。

今日もオリオン座、見つけたよ。


←戻る     次へ→