轟さんの冬の牧場生活
ワンワン

2001年の冬、わたしは北海道にやってきた。
2匹の犬が自由に白い大地を走り回っていた。
うちの犬とは大違い。
首輪がない。吠えたりしない。
びっくりした、ここは全部ここの牧場の敷地なんだそうだ。
とっても広い。
隣の家まで4キロあります。

ももこです

わたしの任務は子牛のお世話。
とびきり可愛い子を見つけた。
名前はももちゃん。
2001年1月24日産まれ。
ハズカシがりやさんで、前足が揃ってる所が
何ともキュート。
この頃、とてつもなく寒い日が続いた。
早朝はマイナス30℃はあるだろうとのこと。
そりゃ牛のうんちもカチカチです。
手を洗った後はちゃんと拭かないと指が曲がりません。
朝4時半、牛舎まで歩くのが辛い。
寒さで息をすると肺が痛い。
ももちゃん、風邪引かないでね。

出産現場です

命の現場。
こどもを想う気持ちは人間も牛も一緒なんだね。
・・・
なんて思ったけど、産み落として
「わたし、こどもを産んでなんかいないわよ、ふん」
なんて態度のメス牛もいたり。
そしらぬふりを決め込むのは
産後の弱った姿を他の牛に見られたくないから。
ここは牛乳を出荷する牧場。
よってメス牛しかいない女社会。
雌牛は出産しなければ乳は出ない。
妊娠は100%人工授精。
精子カタログがあるくらいである。
牛社会もなかなか難しい。
異母姉妹がこの牧場だけでもたくさんいるのです。

わたしだけの世界

休日に、走古丹へドライブ。
生まれて初めて流氷を見た。
感動した。
誰も居なくて、
わたししかいなくて、
とっても静かで、
初めて氷が鳴く音をきいた。
人は、こういう場所に来て
いろんなことを考えるべきだと思った。
でも、
この場所を誰にも教えたくないとも思った。

乳だらけ

せっせと乳搾り。
ずらりと並べられた乳・乳・乳。
巨乳ちゃんもいたりします。
約100頭の乳牛の乳。
朝夕二度、365日休むことなく搾られるのである。

牛の顔を見ずとも
100頭全ての乳を見ただけで、
ぴたりと耳標の番号をいい当てれるここの奥さん。
(牛はそれぞれに番号があるのだ。耳にある。)
ものすごい記憶力に脱帽です。

ある意味暴走族(単独)

昼間はトラクターを乗り回す。
ももちゃんたち、子牛のハッチの藁交換。
結構病みつき、おもしろい。
調子に乗ってたら
ハッチを少々破壊。
ごめんなさい。
オレ、白鳥・・・何か文句あっか?

日中に、牧場のみんなで厚岸へ。
白鳥を見れるっていうから楽しみにしていたのに、
アフラック?アフラック?
これが白鳥だったのですね。
鶴みたいに、優雅な生き物だと思ってた。
確かに、白い鳥には間違いない。

ち、見つかったか

生後一ヶ月、ももちゃん脱走。
普段のんびりのももちゃんなのに、
いざはっちの外にでると大はしゃぎで
あまりにかわいくて少し野放しに。
産まれたときは47キロほどだった体重も大分重く。
担いで戻すのが一苦労。


あとちょっと・・・(泣)

日本で一番早い日の出を見たくて
最東端の納沙布岬へ。
ああ、悲しいかな。
ほんの10分ほど
日の出に間に合わず。


巨大な魚がどこかにいそう

もう3月はそこだというのに
うろこのように浮かぶ流氷。
北海道の春はまだまだ先のようだ。
だれもいない、きりたっぷ岬。


ちょっとおめかし☆

雪だるまを作ってみた。
こう見えて結構小型。
それよりも
写っていないかまくら作りに3時間もかけた。
さらさらの雪で作りにくい。
こんなに雪まみれなのに
実は3月18日。
春は何処。


あぁ・・・

再び納沙布岬に挑戦。
一眠りして、3時半にがんばって出発したのに
嗚呼無情。
またしても
ほんの少し日の出に間に合わず。
少し悲しい。
わたしっておばかさん。

ももちゃん、しっかりね

4月上旬、ももちゃん(一番右)の団体生活開始。
同じ頃に産まれたこたちと共に4頭部屋。
幼稚園に入学といったところか。
食が細く、とびきり小柄。
他の3頭がおてんばなだけに
負けずに餌に食いついていけるのか少々不安。
がんばれももちゃん。

「あんた、誰?」

どこを走ってもこの町は牛だらけ。
この町の風景はどこをとってもわたしのお気に入り。
牛・牛・牛・・・
小学校のアンケートで
「一番好きな動物は?」
もちろん栄えある1位は「牛」。
そんな小学校、この町の小学校くらいだろう。

雪がなくなるのは悲しいです

気が付けば、いつの間にか白から茶色に変わってた。
春にはまだ少し遠い気がするけど、
確実に冬は終わっていた。

また、会う日まで

「大好きだけどあいしてるじゃない」
そんなこと、昔言われたことがあった。
何年も、ずっと考えてきたけどわからなかった。
けど、ここで暮らしていて
2つの違いがやっとわかった気がする。

あいするとは、「受け入れて」「許す」ことではないかと
わたしなりに感じることができた。
きっと、考えてわかるものではないし、
人によってその意味は違うのだと思った。

この朝日を見た日に、北海道を後にした。
ももちゃんが立派な母牛になったら
また必ず会いに行くよ。

ここの家族と牛にたくさんのこと教えてもらいました。
仕事は大変だったし、辛かったけど、感謝でいっぱいです。

「ありがとう」

たくさんの「すき」を見つけることができました

そうそう、
どうもわたしは、
白い冬の北海道がとても好きになったみたいです。

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